「その荷物ボクが持とうか?
あっ、右手はなかったんだった。
昨日はあったのにな」
テーセラモデルのドールは、ヒトの良き友となれるよう明るい性格設計がなされることが多いが、彼女は目立った感情の起伏が少なく、瑣末な事への関心が極めて薄い傾向にある。
その一方で活発で行動力に満ちており、空想の世界に思いを馳せる想像力も豊富であるようだ。そのせいか、夢と現実を混合してしまいがち。
彼女は設計された当初から右腕が欠損していた。パーツが合わなかったのか。困ったことに替えのパーツも自身で取り払ってしまうため、オミクロン行きが決定した。
兄さんは近くの低木に咲いていた
花を折り、ボクの髪に刺して。いつも決まって
こう言ってくれる。言ってくれていた。